「都忘れ」と、忘れていた「岩群青」

 滝落ちて群青世界とどろけり  秋櫻子
 いけない、奈良時代には「岩群青」というれっきとした青色の顔料が存在した。藍銅鉱といわれ、孔雀石と一緒に発掘されることが多い。
 
 アズライト 藍銅鉱  岩群青
 マラカイト 孔雀石  岩緑青
 藍銅鉱は、青いのでブルー・マラカイトともいわれるのだった。
 
 このアズライト、たいへん希少で、取引価格も桁が違うほど高価だったという(今もまだ)。
 成瀬正和氏の「正倉院宝物に用いられた無機顔料」を読んだ。
 正倉院宝物で、顔料に「岩群青」が確認できたものは、
 1)暈繝(うんげん)というグラデーションの模様に用いられたもの
 2)碧地金銀絵箱の地色に用いられた2点
 3)木彫、乾漆の伎楽面(呉公)各1面
  対して、孔雀石の「岩緑青」が確認されたものは39点、推定を加えると50点を超える。
 やはり「岩群青」は希少な青色だったようだ。 
 成瀬氏は、東大寺の大仏の原料銅に主として用いられた長門の長登銅山で、藍銅鉱もまた採掘された可能性が大きいとしている。長門の銅に特有のヒ素を検出したためだ。
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  国立劇場の楽屋に寄ってみたら、舞台で使用した花が余っているので持って帰ってくれ、といわれ、紫青の都忘れをもらってきた。春の日を浴びて元気に咲いている。青、白、ピンク、紫青と種類があるらしい。
  
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