初めて行ったミネラルショーでは、日本産のサファイアも手に入れた。サファイアといっても、小さな粒。
奈良県西部、二上山の麓、穴虫の竹田川で採集したものだというので、がぜん興味がわいたのだ。万葉集にも登場するニ上山は神秘的で、筑波山のように、雄岳と雌岳と2つの峰がある。もとは火山だったので、屯鶴峯という石切場があり、多くの古墳の石棺はここから切り出された凝灰岩が用いられた。
麓には、中将姫伝説のある謎の多い「当麻寺」が建っている。相撲の元祖、当麻蹴速(たぎまのけはや)の伝説の地でもある。腕力で知られた蹴速は、垂仁天皇の提案で、出雲の野見宿禰と相撲をとることになる。激しい勝負の末、蹴速は脇骨を折られて死んでしまう。
相撲の始まりの伝説としてよく知られる。
僕は、前々から、これは、土を仕事にしていた力自慢と、石を仕事にしていた力自慢の相撲対決だった、と思ってきた。野見宿禰は、土器や埴輪など土の技術者「土師氏の祖」とされる、土の代表。当麻蹴速は、二上山の石の切り出しや、石棺造りの技術を持ってた技術者として石の代表。
野見=土と、当麻=石の力対決が、7月7日の相撲行事として行われていたのが、説話化され、この蹴速伝説が生まれたのではないかと思っている。
土師氏、当麻氏ともに葬儀に関連が深く、当麻氏は、しのびごと儀礼を行った記録がある。古墳を飾る土師氏の埴輪と、当麻の地から切り出された安山岩で作られた石棺と、葬儀を通して関係深い氏族だったと想像される。