黙って燃える、沙漠のタマリスク

 映画好きの先輩たちとの飲み会は、今回は人形町で開かれた。一人が、「三船」という店を見つけたからだ。三船敏郎にちなんだ居酒屋。壁には、三船敏郎がえんじた役名の板がズラリならべてある。
 権藤金吾(天国と地獄)、桑畑三十郎(用心棒)・・・
 本人の書もあった。「勇猛精進」
 
イメージ 1
 
 「三船」は、「三舩」と表記していた。本名は「舩」だったのだな。署名は発見がある。
 
 「空海」が イメージ 3 と署名していたように。
 (「海」を「毎」と「水」に分解していたのだ、空海は)。
 生ビールをたのむと、ジョッキには「男は黙ってサッポロビール」。1970年ごろの懐かしいCMコピーがプリントしてあった。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 男の風格とは何か? 王たる風格とは何か?
 ほろよい気持ちになって、帰宅途中、そんなことをかんがえた。
 「蒙古の旅」で、デンマーク人の著者ハズルンドは、「樹木の王」について、印象深くかいていた。モンゴル人は、沙漠にはえるタマリスク=檉柳(ぎょりゅう)を樹木の王、モデン・カンとよんでいたというのだ。
  
イメージ 2
沙漠で最上の燃料を供給するタマリスク。
 タマリスクが、名誉ある名をもらった訳は、それが美しいためではなく、それが燃やされるときの毅然たる態度によるのである」とかいている。
 つまり檉柳は小さな青い火焔を上げて、いつまでも燃えて、しかも強風に耐へるのである。他の樹木のように震へ戦き、或ひは爆音を発することもしない。モデン・カンは白い粉状の灰となるまで黙って燃える―愚痴をこぼさないで、『王のように立派に死を迎へる』と蒙古人はいふのである
 王たる風格は、「黙って・・・」。
だったのか。