沖縄のカマキリの方言、イサトゥ

 カマキリの呼び方は、日本全国で調査されている。
 東條操「方言の研究」を読んだら興味深い「関東における蟷螂の俚言」という項があり、柳田国男、佐藤清明氏らが方言分布をやったと書いてあった。
 カマキリには、日本では随分沢山の呼び方がある。
 
 分類して①いぼむしり系②かまきり系③おがめ系④はいとり系⑤とかげ系⑥とうろう系⑦おこりむし系がある。そして、琉球は⑧イシャトゥ
 
 文献では、京都では室町時代まで「いぼむしり」。以後「かまきり」となったと推定される。いぼむしりが古い。いぼむしりは、イボをとる、という俚言から。かまきりは、鎌切り。おがめは、「雄咬め」からではな
く、「拝む」姿から。はいとりは蝿取り、とうろうは蟷螂の字音、おこりむしは、怒った姿、とかげは、「カガミッチョ」といわれ、「カマギッチョ」のかまきりと混用されたということらしい。
 
 ネットで調べると、韓国でもカマキリはイボと同音の「サマグィダ」であるという。いぼむしりの系統は、韓国にもあることになる。
 
 東條氏によると、狩谷棭斎(森鴎外が史伝を書いたあのー)が、芸文類衆で、戦国時代の燕趙の方言に、蟷螂を「食疣」=イボ喰い、と記しているのを発見している。
 華北、朝鮮、日本が「いぼむしり」で共通していることになる。
 
 モンゴルは、テメーレルゲネ・ホロホイ。直訳すると、蜻蛉・蝗。モンゴル族にとっては、鎌に視線は行かず、とんぼのような羽に特徴を見ている。全く発想が違う。
 
 では、琉球の、いしゃとぅ、あるいは、いさとぅは何処から来たのか。「り」の音は、「うぃ」に転訛するから、いしゃとり。いしゃを取る、と解釈できるかもしれない。
  いしゃとはなにか。医者か、あるいはイボのことなのか。よくわからない。
 
 ただ、消去法で考えると、「いぼむしり系」のような気がしている。
 
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  台風12号のおかげで、出張中止。古本読書の日となった