沖縄系古本の前の持ち主

 まだ暑いが、暦では秋。読書で過ごす。新刊書を読むより、古本を楽しむ。古本は、別の楽しみもある。 
前に手にしていた人が分かることが多いのだ。沖縄関係の本に限っても東京・高円寺の球陽書房で手に入れた笹森儀助「南島探検」の1968年の復刻版は、大沖縄文化研究所の所長だった人の名が、ボールペンで書かれていた。
 余白に「明治政府にこれだけの熱意があったら」の義憤が書かれていて、その後この所長が、沖縄で政治家を目指したことも頷けた。
 
 昭和12年に上梓された「南海古陶瓷」(伊東忠太、鎌倉芳太郎)は、「昭和十三年一月三日 京城の寓居にて」とだけ万年筆で書かれていた。ネットで、新潟の人から手に入れたから、戦前にソウルで読んでいた人のものが、新潟に移動したことになる。
 
 古本の持ち主が気になりだしたきっかけは、「日本歴史」という学術雑誌。小宮山書店のガレジセールで売っていたので、琉球王国論」が掲載されていた昭和381月号など何冊か買ったところ、 竹内理三「古代から中世へ」にやたら、赤線が引かれ、「治承四年」に「三年」と赤字を入れてあった。 随分熱心に勉強した学生がいたのだな、と感心したら、裏表紙に苗字氏名のゴム印がおされていて、著名な中世史のY先生と同姓同名だった。昭和38年は、Y先生の鹿児島大卒業の年。やはり勉強していたのだな、と感心したものだった。
 
 古本の読書は、横道にそれてしまいがちだが、そこがまた面白い処でもある。
 
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   「南海古陶瓷」は沖縄の発掘品が紹介され、セレベス出土のものと比較している