いったい、これはなんなのだ、とずっと気になっている。
帯に、差しているのは、刀ではなくて、どう見ても、ヘビに見える。
描かれているのは、幕末に京都で活躍した作陶家の青木木米。
「もくべい」殿の作品に関心をもって、調べたら、こんなへんてこなものに出会ってしまい、頭を悩ませている。
全体の絵は
冨岡鉄斎が描いた木米像。
このヘビのようなものを知りたくて、この絵を掲載している杉田博明「京焼の名工・青木木米の生涯」(新潮社)を読んだが、書かれていなかった。
鉄斎の「芸花叢話」の中の「陶工木米画像併逸事」として、この絵が出ているらしい。この本も見つからない。
このこと、知る人は、知っているのだろうなあ、と思う。
思いついたのは、木米が「九九鱗」という名も持っていたこと。
「九九鱗」には、「六六変じて九九鱗になる」という故事がある。
鯉が、滝を登り、登竜門を越えると、竜になることを、こう言うのだそうだ。
鯉の鱗は、側線で36(6×6)。竜は81(9×9)なので、六六鱗は鯉、九九鱗は竜のことだ。
木米が、九九鱗を名乗ったことは、「竜」を名乗ったことになる。
そうしてみると、鯉が竜に変身したのが、このヘビくんに見えてくる。
鯉が竜になったばかりの姿を、木米が焼き物に仕上げ、小刀のように脇に差していたのか、と推測する。
違っているかなあ。
韓国・仏国寺で見つけた魚龍変化。鯉が竜に変わるところと思って撮影した。
木米の魚龍には、角や髭がないのが、気になるが。