モンゴルでの秘密交渉で想い出したこと

相変らず、密会場所はモンゴル・ウランバートルなのか。
 
 
学生時代、坂本是忠先生の授業で覚えているのは、
 
中ソ関係が悪化していた当時、両国の密使がこっそり会って、交渉するのが、
 
モンゴルだということだった。
 
モンゴルを見ていれば、緊張した中ソの動きが伺える、というのだった。
 
 
モンゴルは、中ソの緩衝地帯になっていて、
 
確かに、北京-モスクワ間で列車が定期的に通り、
 
北京からは中モ国境の、二連、ザミンウデを通って、鉄路でモンゴルに入る。
 
ソ連もコントロール下だったモンゴルへ、簡単に出られる。
 
ジョン・ル・カレなど好きだった僕は、スパイたちが跋扈する匂いがして、
 
ちょっとワクワクしたものだ。
 
 
今年初めだったか、辞めさせられそうだった日本の前の防衛大臣が、なぜか、大事な時期に
 
モンゴル旅行に出たので、
 
それを思い出して、どこかと秘密交渉をするのかな、と見ていた。
 
 
今日の報道では、日本の前の国家公安委員長が、北朝鮮との極秘交渉をモンゴルで行うという、
 
情報が事前に漏れて、書かれていた。
 
 
モンゴルは、地政学的に、いまや、日朝の交渉の場になっているのだろうか。
 
 
自由化されて、ウランバートルも、コソコソ会うイメージではなくなってきた。
 
社会主義時代は、海外からの旅行者が勝手に歩くにも、見張りが付いていた。
 
僕らも、町でカメラを構えると、男たちが飛び出して来て、フィルムを没収された。
 
スパイの雰囲気は、社会主義に似合う。
 
    
一番ぞっとしたのは、モンゴル自由化の直後、
 
ウランバートルで、とある映画プロデューサーに会いに行ったときのことだ。
 
自由モンゴルの象徴的な人物だと、僕は思っていた。
 
モンゴル人のドライバーが、彼の顔を遠くから何度も見て、
 
顔を引きつらせて、言った。
 
「あの男に会うのか。今彼は何をしているのか? 
 
あの男は、秘密警察だったんだぞ」と怖い顔になって言った。
 
 
 社会主義政権化では、ゲシュタポのような男が、
 
自由化とともに、うまく変身していたらしい。名前も変えていたのかもしれない。
 
 
本人に真偽は正せなかった。心底、怖い、と思った。