猫騒動のなかの「チンギスカン」

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 我が家は大変な騒ぎだ。
 若い迷い猫を引き受けた後、昨年から飼っている11歳の猫がすっかり弱り、何も食べられなくなったのだ。動物病院に連れて行き、レントゲンと血液検査を受けたが、異常なしの診断だった。
 翌日もおかしいので家人が連れてゆくと、「明らかな異常です。声帯がはれ上がってます」とのこと。昨日、なんで分からなかったのかとせめたい気持ちだった。
 抗生剤をうつが、快方に向わない。むしろ悪化して、喉の腫れで、水も飲めない状態になった。翌日また病院で点滴をうってもらい、さらに強い抗生剤を打つことになった。感染症ですね、腫瘍の疑いもありますの診断を受けた。
 あんな元気だったのに、一睡も出来ずに、声にならない叫び声をあげる姿に、ああ、迷い猫を引き取らなければよかったか、と後悔した。今は鼻からチューブを入れてもらい、家で薬と栄養剤と水とを注入している。少し元気になったが、治療用カラーをつけた生活にイライラした様子だ。
 
 迷い猫は猫好きの近所の知人に、事情を話して引き取って貰った。去勢については、新しい飼い主に委ねた。
  
 猫の心配をしながら、ちくま文庫のラーフ・フォックスの「ジンギスカン」を読んでいる。翻訳が英文学者の由良君美なので関心を持ったのだ。四方田犬彦の小説「先生とわたし」の中の先生だ。英文学の師弟関係も、弟子の成長とともに、誤解あり、ねたみありと、激しくうねるものだなあ、と一気に読んだものだ。
  父親の奈良出身の哲学者の由良哲次は、莫大な財産を残したとされる。1億円を古墳の発掘資金に提供し、3億円を橿原考古学研究所に寄付、それで由良大和文化研究基金が出来たという人物だ。
 読んでみて、由良君美はチンギスハーンに興味を抱いたのではなくて、著者フォックスに対してなのだな、と分かった。
  ラーフ・フォックス 1900-1936
  英国生まれ。小説家、伝記作家(レーニンジンギスカン)、ジャーナリスト、歴史家、翻訳家、 政治家。オクスフォード卒。革命後のソビエトを旅行し、コミュニズムの洗礼を受けた。 草原地帯の踏査で東洋に対する関心を持った。スペイン市民戦争では、国際義勇軍に加わったが、アンダルシアでの右派反乱軍の戦闘で死亡した。