3階建てで、はじめは東大・本郷の総合博物館くらいかな、と思ったら、違った。農学校設立の明治9年以来の蓄積なのだろうか、400万点の標本を収蔵していて、歴史と伝統の重みを思い知らされ、急ぎ足で廻るのがもったいなかった。昨年のノーベル化学賞受章者、鈴木章名誉教授のメダルも展示してある。
モンゴル高原で見かけて、気になっていたウスバアゲハ科の美しい標本も多数あった。高山植物を食草とするウスバアゲハは、ひらひらと舞う様が、はかなげであり、頼りなげであり、喩えようもなく、美しい飛び方だった。
「増補アイヌ考古学」という北方新書があったので、買って読み出した。中世に内耳鉄鍋が本土から流入し、内耳式の土鍋が北海道で作られたが、内側に吊るす部分=内耳がある容器は、炉に吊るして煮炊きできるようになった証拠で、アイヌ文化にとって、かまどのある住まいから、家に炉のある生活に変った画期的なことだったと知った。