なんだこれは、満州出土怪獣装飾

 家にある、古い本や、雑誌を読み飛ばしている。昭和17年の「古代文化」には、丸茂武重という学者が、満州の怪物だの、怪獣だのを題に論文を掲載していて、興味を持った。
 
 同年4月には「満州出土怪人面攷」、6月号には「満州出土怪獣装飾攷」を発表している。
 失礼だが、大した内容ではない。中国・東北部の古代墳墓など壁画に描かれた、邪を避けるための怪物画像を紹介しているだけである。
 それでも、惹かれたのは、引用してある画が、とっぴなものであったからだ。
  龍とか、山海経の怪物なら見慣れているが、「これはなんだ!」と岡本太郎風にビックリしたのだ。
 
イメージ 1
 
 営城子古墳の壁画は、怪獣が左右対称でないのはいいとしても、目が左側(本人から見て)にひとつしかなくて、しかも、右側には髭のようなものが生えている。無理無理にいえば、ひとつ目と半面髭の顔から、左右に2体のカタツムリが出ている図像という感じである。
 
 「山海経」に描かれた一連の化けものたちとは、また違う発想からきているのではないだろうか。似たものを探して1週間過ぎたが、思い当たらない。
 
 ひょっとして、あの熊楠先生の、「粘菌」に似たのがないだろうか、と思いついた。
 
 
 
奇妙な髭に見えるところが、粘菌に似てなくもない。鬼、龍などの一般的な、「へき邪」像に対して、こういう「へき邪」を、「粘菌的へき邪」と勝手に呼ぶ事に決めた。
 
 
イメージ 2
「古代文化」は、葦牙書房発行で、後藤守一が編集人をしている。甲野勇の「高足考」など面白そうな論文もある。戦時下、よく 続けたものと思う。