失礼だが、大した内容ではない。中国・東北部の古代墳墓など壁画に描かれた、邪を避けるための怪物画像を紹介しているだけである。
それでも、惹かれたのは、引用してある画が、とっぴなものであったからだ。
営城子古墳の壁画は、怪獣が左右対称でないのはいいとしても、目が左側(本人から見て)にひとつしかなくて、しかも、右側には髭のようなものが生えている。無理無理にいえば、ひとつ目と半面髭の顔から、左右に2体のカタツムリが出ている図像という感じである。
「山海経」に描かれた一連の化けものたちとは、また違う発想からきているのではないだろうか。似たものを探して1週間過ぎたが、思い当たらない。
ひょっとして、あの熊楠先生の、「粘菌」に似たのがないだろうか、と思いついた。
奇妙な髭に見えるところが、粘菌に似てなくもない。鬼、龍などの一般的な、「へき邪」像に対して、こういう「へき邪」を、「粘菌的へき邪」と勝手に呼ぶ事に決めた。
「古代文化」は、葦牙書房発行で、後藤守一が編集人をしている。甲野勇の「高足考」など面白そうな論文もある。戦時下、よく 続けたものと思う。