沖縄の天敵と3500万年戦った生き物

 壱岐の辰の島の砂浜で、走るウニを始めて見た。
 
 子供の小さな網にかかったのだ。ウニだ、と取ろうとすると、裏面に動く小さなトゲがたくさんあってゾッとした。売店のお兄さんに聞いても、見たことない、と気味悪がる。
 
 調べると、ウニの仲間の、ブンブクチャガマの一種、ヒラタブンブクだった。
 
 誰か、研究している人がいないかと、ずっと探していたら、金沢謙一さんという古生物学者を発見した。金沢さんの研究はすごい。
 
 沖縄などに生息する巻貝のトゥカムリが、5000万年前から天敵だったというのだ。同じころに出現し、ヒラタブンブクと同じ、浅海砂底で生息し、ウニ類を食べまくった。ヒラタブンブクは走って逃げ、トゥカムリは襲って押さえ込もうとする、長い年月、3500万年が続いた。
 1500万年前に、トゥカムリは大型化し、ヒラタブンブクの3倍の大きさになったので、もう走るだけでは、逃げられなくなった。ヒラタブンブクは、トゥカムリの住む場所から逃がれて、一は深海に、一は潮間帯に生息場所を移し、現在に至っているという。
 
 壱岐で僕が見たのは、潮間帯に逃げた一族の後裔ということになる。化石の研究から、以上のことを突き止めた、すごい先生だ。金沢先生のHPも興味深い。こういう先生がいると、なんだか、ホッとして、こころ明るむ。