
モンゴル語を覚えたての頃「アルタンガダス」という美しい言葉を知った。
アルタンは金の、という意味で、
ガダスが鋲(びょう)、釘、杭。
「金の鋲」
実は、北極星のことだった。
星は夜空をグルグル廻っているが、天には廻らない中心がある。そう北極星(ほんとは少し廻っているのだが)。
モンゴル人は、天空を見ながら、無数の星が廻っている、その中心の北極星を天に打たれた「金の鋲」と表現したのだった。
大相撲の時天空は、モンゴル名でアルタンガダス・フチットバータル。
実は、ソ連邦支配下の社会主義のころ、つまり「モンゴル人民共和国」のころ、モンゴルの人たちは、苗字は名乗らなかった。苗字を持っていたのは、貴族の家系のあかしであったことから、苗字を隠したのだった。モンゴルの英雄チンギスハーンと深い繋がりがある末裔たちが名乗る「アルタンガダス」も同様だった。
社会主義下では、モンゴル人の独立心を抑えるため、ずっとチンギスハーンは、「禁止」され、口に出すことはタブーだった。民主化され「モンゴル国」と名が変わってから、チンギスハーンは民族一体の象徴として復権した。
時天空はそのアルタンガダスを名乗っている。モンゴルでは、父親の名+自分の名で、姓名を表記しているので、アルタンガダスは父親の名なのだろう。
首都ウランバートル近くの、トゥブ(中央)県アルタンボラグ村出身。ちょっと気になるアルタンガダスなのだ。
名前のフチットバートルは、「力のある英雄」という意味。