猫の目時計の歌があった

 猫の目時計について、金井紫雲(1887-1954)が、興味深い古歌を紹介していた(「動物と芸術」昭和7年、芸艸堂)。

 

六つ円く、五七卵に四つ八つは柿のたねなり、九つは針

 

というものだ。

 

 六つ=午前6時  猫の目は 円

 五つ=午前8時  猫の目は 卵

 七つ=午後4時    〃

 四つ=午前10時 猫の目は 柿の種

 八つ=午後2時    〃

 九つ=正午    猫の目は 針

 

 朝から、猫の目が 円→卵→柿の種→針→柿の種→卵→円 と移り行くさまを歌にしている。残念ながら、古歌とだけあって、明治につくられたか、江戸時代なのか分からない。

 

 柿の種

 

 ただ、元禄3年に、猫の目時計について記した宋代の蘇東坡「物類相感志」を須原屋平左衛門が刊行し、天保11年には、山崎美成が「三養雑記」で引用。江戸時代からわが国でも関心を持たれたことが分かる。

 

 子半線、卯酉円、寅申巳亥銀杏、辰戌丑未側如銭

 

 というもので、

 子の刻(正午)は半線。卯(明六つ)と酉(暮六つ)は円。寅申(七つ)、巳亥(四つ)は銀杏。辰戌(五つ)丑未(八つ)は、則ち銭の如し。

 

 少し日本の古歌と内容が違っている。

 

 山崎美成「三養雑記」

 

 猫の目の表現を比べてみると

 

 円は同じ、針、半線もほぼ同様。日本の柿の種と卵は、銀杏と銭に変り、若干異同がある。

 銭にもいろいろとあるが、蘇東坡の時代の宋銭は、いずれも四角い穴があいている。猫の瞳孔が、午前8時や午後2時頃、宋銭の穴の様に中央で小さくなる、と見ているのだろうか。

 違いを比べてみると

 

       

  柿の種    鶏卵

   

   

  銀杏     宋銭

 

  蘇東坡は、違った観察をしていたようだ。また、謎がでてきてしまった。

 

  銭の如き瞳孔か