「あれ何?」散策

 連休中に、一時預かった3歳の孫娘を連れて、近くの沼まで散歩に出た。孫は、舗道沿いや、舗石の隙間の土に咲いているヒメジオンアカツメクサカタバミを指さして、「あれ何?」とやたら質問して名前を聞きたがる。タンポポは知っているらしく、質問しない。

 小さいので目の位置が地面に近い。そのせいか大人が見落としてしまう小さな生き物に目が行くらしいのだ。

 沼沿いの遊歩道では、桜樹の下で「蟻がいるよ」と座り込み、地面近くを細かく方向転換して飛んでいるシジミチョウを指して、「あれ何?」と聞いてくる。

 

ヤマトシジミかな。シジミチョウの仲間」。

 

 濁った沼で開花していた蓮の花が気に入ったらしく、石段を下りて沼の柵から乗り出す。「あれ何?」

 

 

「あれはね、濁った水の中から純白の花を咲かせる蓮…」と言いかけて、「蓮、ハクレン」とだけ答える。濁世の中でも独り清らかに花開く蓮だから、絵でも彫刻でも、仏さまは蓮の上に坐っているのだよ、とでも伝えたくなるが、押し付けはだめ、だいいち3歳の子には訳が分からないだろう、と反省する。

 

 蟻とシジミチョウの不思議な関係も知ってもらいたいなと思う。

 

 シジミチョウの幼虫は、蟻に守られて成長すると。

 幼虫は寄生蜂が大敵だ。隙あらば、蜂は幼虫の体に産卵。孵化すると幼虫を食べつくしてしまう。

 その対策としてシジミチョウの幼虫は蜜を出して、蟻を引き寄せ、数匹をボディガードにし、寄生蜂から護ってもらっている。シジミチョウの幼虫は蟻に守られ、一方、蟻も蜜を貰い、お互い助け合っているとー。

 

 しかし、もっと大きくなったら、その先を知ってほしい。

 この関係は、シジミチョウと蟻の、美しい共生(相互利益の相利共生)だと思われてきたのが、7年前に神戸大の研究者(北條賢氏)らが新事実を突き止めた。

 シジミチョウ(ムラサキシジミ)の幼虫の蜜の作用を解明したのだ。糖、アミノ酸たっぷりの蜜を食べた蟻(アミメアリ)は、脳内物質ドーパミンの働きが抑えられ、体の動きが悪くなり、歩行活動が減少し、攻撃性を増すことが分かったという。

 蜜の効果で、蟻は幼虫の傍にとどまって長い間随伴し、幼虫に接近する寄生蜂を攻撃して撃退するのだった。

 つまり、シジミチョウの幼虫は、蜜を使って蟻を操作し、ボディガードに仕立てているのだと。実にしたたかなのだ。

 

 子どもにどこまで伝えるか。

 なにも教えず、もし関心を持ったら、自分で調べるのを手伝ってあげよう。

 

 ドラえもんのアイスが食べたいというので、コンビニに向った。