秋に山野草の会に初めて行って手に入れたヒキノカサが、めでたいほど黄色の花をつけたので、春の山野草の会の知らせに、細について、いそいそと出かけたのだった。
愛好家が出品した鉢を見て回る。伊吹山や琉球の名がついた山野草ー。私は、シコタンハコベ(上)とか、エゾネギ、エゾカラマツと、白の花を咲かせる北海道の野草に目を惹かれた。
販売所では、今回も分からないまま、ウサギノシッポという名に惹かれ、ネコジャラシに似た野草、かそけき穂(苞穎というらしい)が気にいってコメガヤ(米茅)を択んだ。
戻ると、細は細の択んだ野草を鉢に植え替えている。「どの鉢がいいか」と聞かれ、ウサギノシッポ、コメガヤも、細の作った盆栽鉢に入れてもらった。
「同じようなものを買ったわねえ。イネ科だから、これ、増えてしょうがないわよ」。
ウサギノシッポには、猫が反応して近づいて来た。ネコジャラシ(エノコログサ)に似ているのは猫も分かるのだ。
ウサギノシッポは、地中海沿岸が原産で、英名も
rabbit tail grass、bunny tail grass、hare's tail grass
と、同じように穂をウサギの尾に見立てて命名している。
エノコログサの方は、穂を犬に見立てて、犬ころ草。
(イヌッコログサ→エノコログサ)。漢名も狗尾草。「(エノコログサの名は)その穂が子犬の尾に似ているからで、一名(ネコジャラシ)は子猫がこれにじゃれるから」(松田修)と「植物図鑑」に書いてあった。
犬の尾がエノコログサで、ウサギの尾がウサギノシッポなのだった。
コメガヤは、小さな穂(苞穎)が米粒ににているから、米茅。この穂を子雀に見たてて、スズメノコという別名もあるのだった。
英名 mountain melick。melickは、ラテン語名の melico nutans から来ていて、melには蜜の意味があるらしい。ある種のコメガヤは茎を齧ると、甘い味がするそうだ。ロシア語名は、穂を真珠に見立てて、「pearlovnik」。
私の数少ない草花の鉢のレパートリーに、ウサギとスズメの名を持つ野草が、カエルの名を持つ野草に加わったことになる。