ストラヴィンスキーからアテネ五輪開会式へ

 五輪大会で開催国のトップとして女性が仕切ったのは、2004年のアテネ五輪が初めてだった。1955年生まれのGIANNA ANGELOPOULOS-DASKALAKIという当時40代後半の女性が腕をふるった。

 政治家で、開会式ではIOCロゲ会長に比しても堂々とスピーチし、存在感の大きさを今でもYOUTUBEで確認することができる。

 

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 私が、アテネ五輪の開会式にいままた関心をもったのは、作曲家ストラヴィンスキーハーヴァード大学での講座をまとめた「POETICS Of MUSIC」(初版は1942年)を読み直していて、70年の版から追加された序文があまりにしっかりとした文章なので、筆者のGEORGE SEFERIS(イオルゴス・セフェリス)の人となりに興味を持ったからだ。ノーベル文学賞(63年)を受賞したギリシャの著名な詩人で、外交官の傍ら、オデッセイなどギリシャ古典へアプローチを試み、改めてギリシャ神話世界のもつ大きさを伝えた人だった。

 

 彼の詩「mythistorema3」がアテネ五輪の開会式で朗読されたのだと知って、YOUTUBEで開会式を見たのだ。この詩の朗読の後、ギリシャ神話を基にしたパフォーマンスが繰り広げられていた。

 「I woke with this marble head in my hands」(英訳)で始まる一節で、

 私は両手にこの大理石の頭部を持って目覚めた。/私の肘は疲れ切ってしまったが、どこにそれを置けばいいかわからない。/私が夢から覚めて出てきたとき、それは夢の中に落ちてきたのだ。/それで私たちはひとつになり、もはや分かちがたくなっている。

 と続く。

 アテネの開会式の音楽には、ギリシャの作曲家以外に、思いがけない曲が使われていた。聖火登場には、ドビュッシーの「リア王のファンファーレ」、聖火台点火では、ショスタコーヴィッチの映画音楽「ピロゴーフ」の一節。

 ドビュッシーは「牧神の午後」など、ギリシャ神話への関心は強かったが、ショスタコーヴィッチのロシアの外科医をテーマにした音楽は、ギリシャとどうつながるのか。演出者の意図があったのだろうが分からない。

 

 YOUTUBEで、部分部分飛ばしつつ17年前の開会式を見ながら、開催のあてもままならないTOKYO2020の開会式の演出を、今も組み立てている人がいるのだろうな、と想像してみた。