其角の猫の五徳について、やっと、清の「淵鑑類函」を通して明の「古今譚概」にたどり着いたが、なんということはない。中国文学者の今村与志雄氏(1925-2007)が「猫談義」で、其角の猫の五徳と、馮夢龍編著「古今譚概」の猫の五徳について書いていた。
中国文学者は、やはり凄いと思った。ただ、私の結論と違って、猫の五徳を書いた其角が「古今譚概」を目にしたのかどうか、性急な判断を保留していた。
別々に僧侶が出て来る猫の五徳の話が作られた可能性も捨てきれない、と考えているようなのだ。
「和尚さんと猫」が登場する共通点は、「その背後に、仏教経典における猫という、遠い昔からの文学伝統の存在を感じますのは、私の思いすごしでしょうか」。
猫は仏教経典に登場し、和尚と猫の関係は、文学伝統であるというのだ。猫の話が出てくるときは、和尚も出て来るー。
前に、ここで、仙厓和尚の「南泉斬猫画賛」を紹介した。
猫が、禅僧たちの間で議論の的になっていたのを知った南泉院の禅師が、猫をつまみあげて、刀で斬り捨てて、皆の妄想をとりのぞいた、という中国の話だ。
これも、今村氏は南泉院の僧侶たちにとって、ネコはペットとして存在していた例としてあげている。禅僧と猫が絡む話は、少なくないのだという。
其角が明の「猫の五徳」を読んでいたという証拠が出るまで保留、という姿勢を学者今村氏は崩さない。
さて、今村氏は、芭蕉の弟子たちが猫に関心を持っていることを指摘している。
「蕉門十哲は、ネコという視点からみただけでもいろとりどりで、許六の『風俗文選』(伊藤松宇校訂一九三九年一〇月六刷岩波文庫本)を繙いても、去来に「鼠ノ賦」があれば、支考に「祭猫文」があります。実生活の上では、ものの本によれば、嵐雪は、かねてネコが嫌いであったが、妻がネコ好きで、その影響で、嵐雪はついにネコ好きになったという話も伝わっております。江戸座の祖師ともいうべき其角は、「古麻恋句合」をはじめ、ネコを扱った作がいろいろあります」
宝井其角/服部嵐雪/向井去来/内藤丈草/森川許六/杉山杉風/各務支考/立花北枝/志太野坡/越智越人
面白そう。調べてみる価値がありそうだ。