猫と夫婦喧嘩

 家で猫を飼うと、家族で家を空けられなくなる。長い休みがあっても、一泊も家族旅行に出られなくなった。
 朝、細が外出の支度をするそぶりをしようものなら、猫はすぐ感じ取って、化粧の邪魔しにやってくる。
 
 食事の時は、用もないのに食卓の椅子に飛んできて、食卓の上を伺う。
    見るテレビ番組も、猫に合わせて、「世界ネコ歩き」「ワールドライフ」など、猫が好んで見る動物ものが増えた。猫に限らず動物が出てくると、飛んで行き画面の真ん前で動きを追っている。
 
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 休み中、アニメに猫が出てきたら、やはり飛んで行った。しきりにアニメの子猫を目で追っている。アニメの猫でも、猫だと分かるのだろうか。猫の認知能力について、不思議に思う。
 
 猫のお蔭で、我が家は遠出が出来ない。猫にとって、人間の留守は死活問題である。
 明治29年8月29日付けの、樋口一葉に宛てた泉鏡花の葉書に、哀れな長屋の親子猫の様子が書かれているのを知った(今村与志雄「猫談義」東方書店)。
 
 鏡花の住んでいた東京・大塚の近所の長屋で夫婦喧嘩があり、女房が出て行ってしまった。不貞腐れてか亭主も一晩戻らない。割りを食ったのが、飼い猫。
    親猫は外に出ていたので、家を締め出され、逆に家にいた子猫3匹は家の中に「しめ込まれ」でしまった。
 子猫を呼ぶ親猫と、母を求める子猫3匹が夜通し、内と外でぎゃあぎゃあと泣き騒いでいた、という内容だ。
 亭主は翌日戻ってきたが、女房なしでは手が回らず、猫を捨てに行ったが、すぐまた戻ってきてしまう様がつづられている、という。
 
 外出ばかりか、夫婦喧嘩も猫からすると、御法度ということになる。
 
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