裏焼きの百済観音

 新5000円札の津田梅子の肖像が、左右逆転、つまり「裏焼きした」疑いが出ているという。 津田塾大が財務省に提出した梅子の写真は、正面から見て「右向き」のものばかりだったのが、お札では「左向き」に変わっていたのだという。
 
  お札の右方に肖像を配置するので、「右向き」では、ソッポを向いてしまって使えない。まさか、分かっていて、裏焼きしたのではあるまい。
 
 肖像の裏焼きは、ありえない。新聞などで掲載しようものなら、即、訂正、謝罪記事が必要になる。
 
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  裏焼きと言えばー。
 手元に、古い文庫本がある。角川文庫の井上政次「大和古寺」。奥付の上に、紙が貼られている。珍しいな、と気になっていたのだ。
 
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「訂正 口繪グラビヤ冩眞(四)の百濟観音は、製版の手違ひにて裏焼になって居ります。誠に申譯なくお詫び申上げます。」
 
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 写真は、一見分かりづらいが、確かに、宝瓶を左手でなく、右手で掴んでいて、左右逆転しているのが判る。
 
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 現在の常識では、焼き直して訂正したものをすぐ重版するのだろうが、この文庫本は5版。昭和27年3月末の初版から、2年以上経った29年5月15日の改版でも引っぱって、訂正の紙で済ませていた。
 
 発行まで5年もあるが、お札はどうするのだろう。お札に、訂正の紙を貼って対応するわけにいかないし。