松本たかし主宰「笛」の表紙猫

 猫は天気がよいと窓辺で午後を過ごし、そうでないと我が部屋のクロゼットの上段に潜り込んでじっとしている。休日に、猫が窓辺で脚を伸ばして横になっていたとき、毛並みをなでてみた。春めいてきた日差しを浴びて、体全体があたたかくなっていた。
 
 日差しを抱蔵している! と思った。「抱蔵」なぞという言葉は自分の語彙になかったが、俳人の松本たかし(1903-1956)の句で覚えたのだ。
 
 「午下(ごか)の日を抱蔵したり大桜」というものだ。
 
 満開の大桜が昼下がりの日を浴びて、光りと温もりを、樹木全体に蓄えているー。
 
 YAHOOブログ終了の知らせに、腹立たしい気分で事務所の近所を散歩していたら、見知らぬ古本店を見つけた。神保町で古本店が減っているなか、2、3年前開店したのだという。間口が狭くて気づかなかったのだ。
 
 その店で見つけのが、松本たかしが主宰した俳句文芸誌「笛」だった。昭和2324年発行の2冊だった。24年のものは、黒猫の表紙。
 
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 二科会、一陽会に所属した洋画家・高岡徳太郎画伯の絵だった。尻尾の一部を削ってまで、表紙いっぱいに印刷された猫は迫力がある。
 
 松本たかしには、猫の句が多い。
  猫飼へば猫が友呼ぶ炬燵かな
 
 昭和23年の作品なので、この頃には、東京・久我山の住まいで猫を飼っていたことが分かる。
  買初の小魚すこし猫のため (昭和26年)
  猫のためはや炬燵して露の宿 (同29年)
 かなり猫を甘やかしている。
 
 たかしは昭和31年5月に亡くなったが、その年は、猫の句がとくに目立つ。
  草枯るる猫の墓邊に猫遊び
 
 先代の猫が亡くなって、二代目の猫が庭で遊んでいたようだ。
 
  猫と居る庭あたたかし賀客来る
  霜解の猫の雑巾濡縁に
 正月から猫と穏やかな日を送っている。
 
  三つ飼ふ猫の出入りの日脚伸ぶ
  二つ出て一つ炬燵に春の猫
 飼猫は3匹に増えていたのだった!