ネコと鉱山

 我が家のネコは、夜になると元気になって、一緒に遊びたがる。
 未明にトイレに起きようものなら、走って付いてくる。足にすりすりし、戻る時に、餌を置いてある「猫部屋」に先に駆けて行き、空になったご飯のおねだりか,釣竿のネコジャラシで遊ぼうという強烈アピールをする。
   これで、目が覚めてしまうことも多い。
 
 イメージ 1
 
  眠れないので、ネコについて、また、つまらないことを考えてみる。 猫岳、猫山、猫川、猫沢、猫塚、猫穴…。ネコのつく地形がたくさんあるなあ、と。
  なんで、猫という名がついているのだろうか。
  朝になって調べると、猫名は、だいたい解決がついているようだった。ネコは、根古、根子と表記され、金、銀、銅、鉄、錫などの「鉱脈」のことだという。
  証拠に、鉱山用語に、猫の名称がついているものが多い。
  別子銅山では、坑道で使うハンドハンマーを「猫」と呼ぶ。
  砕石をムシロのようなものの上において、水を流して砂金、砂鉄を採取することを、「ネコ流し」といい、そのムシロのようなものを、「ネコダ」という。
 手押し車を「猫車」というのも、鉱石を運ぶための運搬用具だったからではないかと、推測されている。
 
 はっと、思ったのは、今頭を悩ませている「鉄と三輪山」のことだ。三輪山にもネコの名が登場する。
 崇神紀、崇神記である。内容はー。
 崇神天皇の在位中、疫病が多く死者が出た。悩んだ天皇の夢に、三輪山神大物主神が現れてお告げがあった。「災害は、自分が引き起こした。オオタタネコを以って、我を祭らしめよ」。四方を探すと、河内の美努にオオタタネコがいた。三輪山を祭らせて大神(おおみわ)神社の神主とした。すると、疫病は止んだ。オオタタネコは大物主の子供だった。
 オオタタネコ大田田根子日本書紀)、意富多多泥古命(古事記)と表記される。
 
 三輪山の神、大物主が、鉱山に関連のある名の息子を神主にして、自分を祭らせた、という筋なのだが、当の大物主には、冶金に関係のある「ヒメタタライスズヒメ」という娘がいて、大物主自身が採掘、冶金に大いに関係があるのだった。(タタラは「溶鉱炉のフイゴ」のこと。オオタタネコの「タタ」もそうかもしれない)。
 
 実は崇神天皇の前、3代はネコの名がついた天皇だった。
 ⑦孝霊 オオヤマトネコヒコブトニ
 ⑧孝元 オオヤマトネコクニクル
 ⑨開化 ワカヤマトネコヒコオオヒヒ
 
 続く崇神(ミマキイリヒコイニエ)は、ネコがついていない。三輪の神が怒って、オオタタネコを呼び寄せたかのようなストーリーにも思える。
 面白いことに、後世、チイサコベに三輪山の神を取って来いと命じた21代の雄略天皇(オオハツセワカタケ)の息子22代清寧天皇は、シラカノタケヒロクニオシワカヤマトネコと、ネコ名が“復活”している。
 ネコがつく天皇は、記紀ではこの4人だけだ(奈良、平安で復活する)。
 ネコを止めた崇神と、ネコを引き寄せた雄略。それを、三輪山の鉄の採取と冶金と結びつけると、想像が膨らんでいくように思える。