奈良土産の埴輪が捨てられない。
小学生の時、母親やきょうだいと奈良観光旅行をしたとき、土産物屋で見つけて、欲しくなったのだ。
「こんなのがいいの?」と皆に言われたのをかすかに、覚えている。
その後、女人埴輪のモデルは、奈良はもちろん、関西地方で出土したものでないことを知った。
人物埴輪は、関東など東日本が「本場」。西日本には数も種類も少ないのだった。
奈良で関東のものを買う。「こんなのがいいの?」の意味は、そういうことだったようだ。
今頃になって、女人埴輪の実際のモデルとなった埴輪はなにか気になった。埴輪の本をあたって、すぐ判明。「大きな髷の女」といわれる、人物埴輪の代表的なものだった。高さ87.5センチの大型で、重要文化財。東大総合研究博物館の所蔵だ。
埴輪の女性は、髪を扇のように広げて立てている。巫女のような、宗教的権威を持つ存在を想像させる。
帰る家がもうないのか、ちょっと気の毒になって、土産埴輪がますます捨てにくい。
HPで検索すると、奈良の土産屋には、今も埴輪の土産物が売られている。武装男子埴輪、踊る埴輪(実際は馬ひきか)など、殆どが関東の埴輪をモデルにしている。子供のころの自分のように、土産に買う子供たちがいるのだろうか。