さみしがり猫

 細が突然入院した。夜遅くなっても戻らないので、猫が異変を感じたらしい。ガラス戸から外を見つめ、にゃあにゃあと、大きな声をあげ、別の部屋のガラス戸に行ってまた、にゃあにゃあと、声をあげる。
 
 私は病院から戻ってひと息つき、「あと、3、4日は帰ってこないからな」と猫に語りかけた。
 
 夜が更けると、猫はいつものように細の畳部屋に行ったが、布団が敷かれて居ないので、ゴロンと横になり、畳の上で身体を伸ばした。やがて猫用の箱型ソファに入り、丸まって目を瞑った。夜中の騒ぎは起こさなかった。
 
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 朝、キャットフードをかりかり食べていたが、出勤するので猫を探すと、押入れに入りこんでいた。
 しばらく猫は独りの時間を過ごす。
 
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 今まで、幾度か書いたジャズベーシストのレッド・ミッチェル。演奏するベースの上に子猫をのせた写真を、LPジャケットにした愛すべきジャズマン。
 彼は、いくつかの詩を残しているが、そのうちのひとつ。
 
《すべての生き物たちはおはこを持っている。
ヤマアラシは針を持ち、
ペンギンは燕尾服を着ている
 
スカンクは技を身につけ
猫は独立心を持ち、ネズミを食べ、蚤を養っている
ネズミはいくらか依存心が強いが
飼いならされると実はいいやつらだ
 
犬は大昔我々を選び、部屋、食事代の代わりに愛を与えた
(後略)
(原詩は韻を踏んで素晴らしいのだが、伝えられない)
 
 レッド・ミッチェル流で行くと、うちの猫は、人間とだけ付き合って暮らしているので、ちょっとネズミになってきたのかと、気にかかる。