断り続けていた猫を結局貰い受けた。
庭に出没する野良猫を、家猫として慣らして飼っている夫妻から、話があったのだ。
郊外にある家を訪ねて、車で家に運んだ。
はじめは、警戒して、物陰に隠れてしまい、何も食べず、トイレにも入らない。
3日経ち、4日経ち、半ば諦めていたところ、食べるようになり、大量のウンチをしたので、これで大丈夫と思った。
そのうち、昼は警戒しているものの、夜は暴れまくり、棚から物を落とし、ドアに突撃する音がして、目が覚めることが多くなった。
しだいに距離が狭まり、1ヶ月たって、身体を擦り付けてくるようになった。
テレビの前のソファに自分の場所を定め、テレビにも反応する。2次元世界の理解がまだ足りず、画面の猫に前脚を出して触り、ディスプレーの後ろに、猫がいるのではないかと覗いている。
報告に元の飼い主夫妻を訪問すると、野良時代の様子を話してくれた。
1年ちょっと前、やせこけて、左後ろ足が不自由な子猫が庭にやってくるようになった。捕まえて家に入れようとしても、反抗する。猫はどんどんやせてきて、このままでは死んでしまう。夫妻は決断して助っ人とともに4人がかりで確保したのだという。
他に2匹が住む猫部屋でも、物陰に隠れて孤立していたが、餌付けし、病院に連れて行き骨折を治療すると、だんだんなれてきたのだという。
食事をねだり、足をぺろぺろ舐めに来る猫の変わりように感慨を覚えつつ、前の猫のように時々人間の悩みを聞いてくれるような、奥行きの深い、頼りになる「人格猫」にやがてはなってくれるのか、思い巡らしている。