銀杯草がすくすくと鉢植えで育っている。
嵯峨野のお寺に咲いていた植物を幾種類も頂いて持ち帰ったもののひとつだ。住職が汗水たらして、スコップで掘り起こしてくれたのだった。今回は大量に頂き、家で確かめると、シランなど7種類もあった。有難い。
近所の嵐山界隈から花の種が飛んで来て、寺の庭で成長したものだ。数年前に、実生のイロハ紅葉を頂戴したのが、きっかけで我侭言っている。
《比良山系の頂きで、あの香り高く白い高山植物の群落が、その急峻な斜面を美しくおおっていた。その写真を見た時、私はいつか自分が、人の世の生活の疲労と悲しみをリュックいっぱいに詰め、まなかいに立つ比良の稜線を仰ぎながら、湖畔の小さい軽便鉄道にゆられ、この美しい山巓(さんてん)の一角に辿りつく日があるであろうことを、ひそかに心に期して疑わなかった》
去年、福岡の旅先で「国境の山岳信仰・脊振山系の聖地・霊場を巡る」(伊都国歴史博物館刊)を手に入れた。中で、九州歴史資料館の岡寺良さんが、福岡と佐賀の国境に連なる脊振山系のシャクナゲのことを書いていた(「コラム 脊振山とシャクナゲ」)。
「シャクナゲは修験の春の峰入りの際、拝所などに立てるための植物として重要視されたもので、修験者により繁殖され、その後、野生化したものと考えられる」。
さらに、脊振山の伝説を紹介していた。要約するとー。
脊振山の弁天様が英彦山の修験道の寄り合いに参加し、山一面に咲く見事なシャクナゲを見て、一株持ち帰ろうと思った。英彦山の天狗に拒否されたが、何とか持ち出したところ、怒った天狗が追いかけてきてつかまり、あわてて弁天様は脊振山の麓で花を放り投げた。花は竹ノ屋敷に落ちた。
-というものだ。