オノコロ島に居たのもハクセキレイか

 3年前に噴火して12倍の広さになった小笠原の西之島新島に、調査団が初上陸した様子をNHKが報道していた。

 ぼんやりと見ていたら、アオツラカツオドリ、カツオドリ、セグロアジサシ、オナガミズナギドリの海鳥に混じって、ハクセキレイの目撃談が出てきて、俄然興味がわいた。
 
 コンビニの前や、スーパ―の入り口と、セキレイは人懐っこく、地面をはねて長い尾を振っている。好奇心が強いとは思っていたが、まさか産まれたばかりの溶岩の島まで出かけているとは思わなかった。
 小笠原の父島から約130㌔離れている。最低でも130㌔飛んで行ったのだ。
 
 思い起こしたのは、セキレイが日本神話のイザナキ、イザナミの国生み神話に登場することだった。
 二柱の男女神が、天の浮橋から「この底の一番下に国がないはずがない」と青海原に矛を下ろして探った時、海水がしたたり凝り固まって、オノコロ島が出来た。そこに、セキレイはやってきた。
 オノコロ島で国生みをしようとした二神は、子作りの仕方が判らない。
 セキレイが頭と尻尾を振るのを見て、男女神は見習ったという(日本書紀。一書=第五の記述)。
 
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 溶岩の島ばかりか、神話のセキレイは、塩で出来た島にも好奇心を持ってやってきていたのだ。セキレイの生態をよく知った人々から生れた神話だと思う。
 
 日本に生息するセキレイは3種。白と黒の、セグロセキレイハクセキレイ、そして黄色い下腹部のキセキレイハクセキレイセグロセキレイ同様に背は黒いので、目の下で見分けるという。目の下が白いのがハクセキレイ、黒いのがセグロセキレイとのことだ。
 
 オノコロ島のセキレイは、どれだったのか。
 
 台湾のアミ族の伝説に、やはり、セキレイが出て来るそっくりな話がある。戦前、佐山融吉、大西吉寿両氏が採集した「生蕃伝説集」に記される。
 東海の孤島に男女神が降り、ホワック=セキレイが尾を振るのを見て交合の方法を知るというものだ。
   アミ族は、花蓮から台東の台湾東海岸に住んでいる。孤島は、東海岸の沖なのだろう。
 
 となると、セキレイは日本、台湾に共通して生息するセキレイとなる。セグロセキレイは、日本固有で、台湾にはいない。キセキレイハクセキレイに比べて警戒心が強く、人前には出て来ない。
 
 となると、人間を恐れず、生まれたての島を見に行く好奇心の持ち主に絞っていいだろう。オノコロ島のセキレイは、ハクセキレイだったと結論する。
 
 
 写真は、埼玉県日高地方で先月に見かけたハクセキレイ