印度ジャイプールの玩具に出合う

 激しい雨の中、細に誘われて、ビル全館で行っている各種問屋の特別セールにやってきた。12階、11階と上から順々に下りて、各階にある問屋を回る。人混みの中、細に付いて歩く。ほとんど興味がない店ばかりだが、古びた玩具や民芸品を扱う店があった。

 店の隅に、動物玩具が置いてある。
「どこの玩具ですか」
「印度です」
「印度のどこですか」
「ジャイプールですね」
「ジャイプール?」
 
イメージ 1
 
 印度にペンギンは居なかったよな、と思いながら、黒と白のペンギン2羽を選んでレジに運んだ。固くて重い木で胴体を作って、くちばし、飛べない翼、脚、円らな瞳を真鍮で拵えて貼り付けている。
 興味がわいたのは、仕事場近くの美術書の古本店で、岸本彩星童人「南方共栄圏の民藝」(昭和18年、造形芸術社)を買って読んでいたせいもある。
 
イメージ 2
 岸本は、海運会社の3代目社長岸本五兵衛(1897-1946)で、玩具コレクターとしては、「岸本彩星童人」という長い筆名を用いたのだという。兵庫県武庫住吉村に莫大なコレクションを保管し、私設博物館の建設に着手したが、完成間近にして、米軍の空襲で焼失。コレクションは灰燼と化してしまった。
 五兵衛は46年に病死。僅かに残った数千点のみ、天理参考館に移管されたそうだ(グローカル天理 2013年11月号による)。
 
 
「南方共栄圏の民藝」の中では、タイの起き上がり小法師を面白く思った。特に兎が。
タイ国は不思議と木製の玩具は少なく、其の代り張子の玩具が多く皆玩具としての佳品揃ひです。殊に起上りに非常に良い物が見出されます」(岸本)
 タイで今も作られているのだろうか。
イメージ 3
印度ラージャスタン州の州都ジャイプールの、真鍮を用いた木製玩具にもいわれがあるに違いない。