中学時代に茂田井画伯の狸に触れていたのだった

 佐藤垢石の「狸の入院」の装幀で、茂田井武画伯を初めて知った、と前に書いたけれど、なんと中学生の頃から、知らずに茂田井画伯の挿絵に触れていたことが分かった。
 
 
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 部屋の整理をしていたら、出てきたのだ、処分しなかった大昔の本が。
「英語絵ばなし叢書」という有朋堂のシリーズの「SHOJOJI NO TANUKI」。富山武がやさしい英語で、木更津の「證誠寺の狸」を書き下ろしたものだ。
 
 51点ある狸と和尚の挿絵が気に入って捨てられなかったのだった。 
 茂田井画伯の絵と判らなかったのも無理はない。表紙を見ても、作者の名はあっても、挿絵画家の名がない。裏表紙に小さく、目立たずに、「CARTOONS BY T.MOTAI」とあるだけだから。
 
 富山氏はあとがきで、「茂田井先生も、おいそがしい所を、わざわざ木更津までおいでになって、挿絵をおかき下さったのです」と書いている。茂田井画伯、茂田井先生という文字はあっても、挿絵画家のフルネーム表記がない。初版の昭和25年=1950年当時は、まだ、挿絵画家の立場は、高くなかったかのように思える、僕ら中学生は、挿絵に心惹かれたのに。
 
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 懐かしい。狸が和尚を慕っている絵の下の文章を覚えていた。
 
THE PRIEST LOVED THE BADGER. 
THE BADGER LOVED THE PRIEST.
THEY WERE GOOD FRIENDS.
 
 和尚は狸を愛した。
 狸は和尚を愛した。
 彼らはいい友達だった。
 
 動物を人間が飼う関係でなく、ともに愛していて、友だちだという表現が、ほのぼのとした絵に合っていた。茂田井武(1908-1956)42歳の時の仕事だった。
 
このシリーズは、他に、森のラベちゃん/河童、その他/魔法の鞭、その他/新作・羽衣/花売娘/ディキー・ベアがある。
「新作・羽衣」も持っていたはずだ。あっちは、動物が出て来なかったせいか、捨ててしまった覚えがある。
今は、古本店でも見つからない貴重な子供用の英語絵本なのに。