虎の陶枕、獅子の陶枕

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 猫の枕騒動のあと、「虎の枕」があることを知りちょっと調べてみた。虎の形をした陶器の枕で、東京国立博物館が所蔵し展示していた。「横河コレクション」のひとつだった。
 中国の磁州窯のもので、寝そべった虎の背中が平らになっており、そこに人間の頭をのせられるように作られている。その背中には小鳥や草木が描かれ、金代から元代にかけての磁州窯の典型的「虎の陶枕」ということだった。
   面白い形だし、虎の表情に愛嬌があるせいか、NYの Brooklyn museum にも、サンフランシスコの Asian art museum にも、類似した陶枕が所蔵されている。
 
 
 虎の頭は邪をはらうー、中国では古代からこんな伝承があり、虎の頭でつくった枕なら、悪夢も追い払う効能があると考えたのだろう。
 唐の「新修本草」(657)によると、
俗に云う 虎頭をもて枕に作れば悪魘を辟く」(悪魘は、悪夢にうなされること。)という。
 
 金代(1115-1234)、磁州窯という活気あふれる民窯で、虎の陶枕のヒット商品が生み出されたわけだ。
 
 横河民輔氏が寄贈した東博の「横河コレクション」には、虎ばかりか磁州窯の獅子の枕もある。時代は少し前の北宋(969-1127)とされる。
 
 鎌倉時代に編集された説話集「十訓抄(じっきんしょう)」に陶枕が出てくる話が残っている。右大臣の徳大寺公継が、女御に獅子の形をした陶枕を贈ったというものだ。
 
 女御が受け取ったのは、東博の獅子の陶枕のようなものだったのか。
 夏に涼しい陶枕、それも獅子や虎を象った枕で眠っている女御を想像してみる。
 
 
  上野動物公園で、みつけたもう一つの虎。
 
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 上野動物公園に入らないとみられない、旧寛永寺五重塔に2頭の虎の装飾があった。十二支の一で一頭は前足をなめている。17世紀の作で、彩色が鮮明なのは2013―2014年に塗りなおされたため。