
荒川沿いの広い公園を散歩すると、野良猫に出あった。
声をかけると、完全無視を決めこみ、
近づいてもあわてず、堂々と、ゆっくり離れていった。
厳しい冬を野良猫として無時乗り越えたことで、自信をつかんだかのように。
不思議と肥えている。
別の野良猫は、川べりでネズミのような小動物を追いつめていた。
小動物が川の中にとびこむと、さっとあきらめて、先をすすんでいった。
狩りをしているのだ。
たくましい猫だけ、冬を過ごせたのか。
家にもどって、「ひとり歩く猫」(The Cat That Walked by Himself)の
作者キップリング(1865-1936)の描いた猫の絵と比較してみる。
尾をあげているところがちがった。

インド・ムンバイ生まれの英人作家キップリングが1902年に書いたこの猫は、
洞穴で住みだした人間一家の母親と交渉し、猫流の生き方を認めさせる児童向けの話だ。
人間に簡単に取り込まれた、馬、牛、犬とちがって、
知恵ものの猫は、交渉する。
洞窟の焚火のそばで暖まり、1日に3回温かいミルクを保障してくれれば、
いつでも洞窟のネズミをつかまえ、人間の赤ちゃんの面倒もみる、と。
但し、赤ちゃんが尻尾を強く引っ張らないこと、そして、猫の生き方を認めてくれることが条件と、
猫の自由を保障させる。
He is the Cat that walks by himself, and all places are alike to him.
一人で歩き、しばられず、どこでも好きなところへ行くのが、猫というわけだ。
川沿いの猫たちは、人間の勝手で捨てられたのだろうが、
知恵ある猫の習性をもっているようにおもえた。
とにかく、長く生きてほしいとおもった。