漱石の明治43年3月2日の日記

 桃の節句には、細が別の雛をかざるので、叔母の手作りの紙の小雛は、長年わすれさられている。
 
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 探しだして、わが部屋にかざった。
 
 仕事から戻り、乱雑極まりない本棚を整理。夏目漱石明治43年(1910)の日記をながめていたら、ひな祭りの前日の、3月2日に、こうあった。
 
「雛を賣る店。
 櫻の作り花。
 鯛と榮螺と蛤を籃に盛りて青き笹を敷きたるが魚屋の店にあり。
 赤く塗った蒲鉾も澤山竝んでゐる。
 花屋が赤い桃の花を竹の筒に挿してゐた」
 
 明治43年の町の光景は、目にも鮮やかだ。
 
 ひな祭り用に、魚屋には、かごに笹を敷いて、タイ、サザエ、ハマグリを盛りあわせて売っている。
 鯛の赤、蒲鉾の赤、桃の赤。女の子の節句に、めでたい赤が、色をそえている。