江戸時代からウミウサギ

 江戸時代に、とんでもない貝の図鑑がでていた。江戸の旗本、武蔵石寿(1766-1861)が、服部雪斎に画をかかせて、991種の貝を紹介している「目八譜」(もくはちふ)。
 目八というのは、目と八を組み合わせると「貝」になるからとのこと。
 
 全15巻の図鑑。1843年(天保13)にこんな精緻で見事な図鑑が書かれていたことに驚いてしまう。
 これも、国立国会図書館デジタルコレクションで見ることができる。
 
 巻9の巻末近くに、4点の図とともに、ウミウサギについてかかれていた。
形状宝貝ニ似テ小異也・・・ 大サ四五分ヨリ寸以下ノ者ヲ児兎ト云、寸以上三寸前後ノ者ヲ和名海兎ト云
《形はタカラガイに似ているが少し違う。・・・大きさ一センチ強から三センチまでのものをコウサギ、三センチ以上一〇センチ前後のものを和名でウミウサギという≫
 
イメージ 1 コウサギ イメージ 2 ウミウサギ
 
 江戸時代にすでに、ウミウサギという名が付いていたことが判明した。
 しかも、小さなウミウサギ(たぶん、セムシウミウサギだろう)を、コウサギといういい呼び方をしていたのだった。
 
漢名貝光禄琉球或薩州屋久島ノ産ニテ稀珍トシテ愛寵ス可シ甚難得モノ也
《漢名は貝光禄、琉球あるいは屋久島の産。稀少で得難いものなので、愛寵すべきものだ≫
 
 白く光沢のあるこの貝を、卵や白磁に見立てた欧州と違って、琉球屋久島の人々は、古くから、ウサギに例えていたのだった。
 
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 我が家にもうひとつ、ウミウサギ科の小さな貝があった。
 
イメージ 3 カフスボタンガイ。
 
 日本では採れない。もっと南海。英名は フラミンゴ タング スネイルという。フラミンゴの舌の貝。カフスボタンに似ているので、日本名はこんな名になったのだろう。命名は明治の欧化後だろうが、わからない。