新居にまず猫をいれるロシアの風習について、ヒントをみつけた。
栗原成郎氏「ロシア異界幻想」(岩波新書、2002)の、第2章の「家の霊域に棲むもの」。
東スラブ人(ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人)の伝統的な農家イズバーには、祖霊の化身である家の精ドモヴォイが住んでいる、と信じられていたし、今も信じられているというのだ。ペチカの陰、屋根裏、地下室、敷居の下に隠れている。
ドモヴォイは子孫を見守る守護霊であるが、家族の死や不幸を予告したリもする。
また、蛇、蛙、クマネズミ、猫、犬、兎、豚、子羊、鼬、栗鼠、雄鶏に変身。
「南ロシアの農民たちの話によれば、異なる家に属するドモヴォイたちは、黒猫の姿をとって格闘することがある」という。
家には、まず、ドモヴォイが住まないといけない。新居に入居する前に、猫に変身したドモヴォイを家にいれる。
現代版のドモヴォイ伝説が、銀行の猫プレゼントにつながっているのではないか。