ネコや虎や獅子が噛む話

 ネコに額をかじられる寝苦しい夜をすごしているが、まだ、甘噛みなのでゆるしている。頭を噛まれた思い出は、子供のころ、獅子舞の獅子頭くらいか。無病息災のおまじないだといわれ、順番をまって、噛んでもらった。健康にそだつというより、頭がよくなるからといわれた気がする。
  風習はのこっていて、全国各地でおこなわれている。
 
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虎食人卣=「中国青銅器」(上海古籍出版社、88年)
 
 虎の動物神が、生贄の人間、あるいは悪霊をたべる姿をえがいたという、商の時代の「虎食人卣(ゆう)」についても、たべているのでなく、動物神が、人を守護している姿とする説がある。実際、虎食人卣の優品2点を所蔵する日仏の美術館とも、
 「虎卣」(京都の泉屋博古館)、
 「雌虎-ネコ科の動物の形をした容器」(パリ・cernuschi(セルヌスキ)美術館)
と食人の表記は抜いてある。フランスでは、中国古代の説話から、母性をもつ虎が人間を助ける図柄だと解釈しているようだ。
  噛んでも、口にいれても、たべるわけではない、ということらしい。日本でも、虎が噛む姿がえがかれた3世紀ごろの青銅鏡が出土する。
 
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 古墳で出土する三角縁神獣鏡銘もあって、
 「吾作明鏡甚大好、・・・龍虎身有文章口銜巨」
「陳氏作鏡甚大好、・・・龍虎身有文章口銜巨」
 <吾(陳氏)の作った鏡は甚だ大きくて好い。・・・竜虎の体には文様があり、口に巨をくわえている>
 と、虎と龍がかんでいるのは、「巨」としている。「巨」ってなに?
  図柄を観察すると、長い金属のようなものをかんでいて、「巨」の異体字の「鉅」=鋼、鉄か、
 異体字の「矩」=さしがね、あたりか。
 
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  この噛む竜虎は、舞楽の装束や、四天王像の「帯喰」にも通じるものがある。