わが家に幾種類かのスミレが咲いた。洗面台の小瓶に活けてあって、気づいた。
ずいぶん前、スミレのことを「太郎坊」と呼ぶのを、幸田露伴の小説「太郎坊」で知った。天狗好きの私は、太郎坊といえば、京都・愛宕山の天狗。次郎坊というと京都・比良山の天狗と思っていたから、はて、どうしてなのか不思議だった。
スミレに似た花に、「次郎坊延胡索(えんごさく)」があって、スミレも、次郎坊延胡索も、花をひっかけて、引っ張り合う草の相撲を取る花であることが、調べてみてわかった。
子どものころ、シロツメクサで草の相撲をしたことがあるが、スミレは花のすぐ下の茎が直角に曲がっているから、相撲を取りやすいようだ。
天狗とスミレの関連を想像して達した結論は、スミレの「距」が天狗の鼻に似ているということだった。距は花弁の奥が隆起したもので、次郎坊延胡索にも距がある。
菫の「距」は、長く伸びて、天狗の鼻に似ている
草相撲をしながら、天狗同士が戦うものと想像することで、子供たちの楽しさも膨らんでいったのではないか。