学生時代から鉄砲撃ちとして知られた垢石は、地元の老人に、夜な夜な人魂がでるのは、キツネの仕業に違いないから退治してほしいと依頼された。
垢石が幾夜もかけて見つけた暗闇の中の光は、人魂でもキツネでもなく、2羽のアオサギだった。
「浅い水中へ長い脚を半ば入れて立ち、ときどき水中へ嘴を入れて水を含み、その嘴を胸毛のなかへ差し入れて吐くと、胸毛から水が二滴、三滴づつ、したたり落ちる。その水滴が、水面に達すると、水面がぼうと明るくなるのである」
「あとで野鳥研究家にきいた話であるが、鷺には胸毛の肌毛にやわらかい短い毛があって、その毛根から脂肪分泌し、これを水滴に注ぐと光りを発するものであるさうだ。鷺は、胸毛に水を注いではこれを水面に落とし、水面に光りを生ずるとあたりの小魚が集まってくる。そこを長い嘴で、ぱくりとやるのであるといふ」
同市には、ミサゴ、オオタカ、ハイイロチュウヒと鷹も多いので、僕は前から感心していた。市長は、冬も水田に水を湛え、コウノトリが繁殖する昔の環境を取り戻したいと言っていたが、コウノトリ2羽を動物園から譲り受けて、ヒナも育てているのだった。関東平野に、特別天然記念物が舞う日が来るかもしれない、