カワウソ犬は日本版レトリーバーか

 13世紀にモズを用いて鷹狩をした名人鷹匠信濃にいたが、オオタカハイタカ、コノリなどの通常の鷹ではなく、魚を捕るミサゴを用いた鷹狩の伝承もあったらしい。
 
 「ミサゴ腹の鷹」といわれ、ミサゴと他の鷹のハイブリッドということだった。二本松泰子氏「中世鷹書の文化伝承」(三弥井書店)を読んで知った。
 
 「西園寺家鷹口伝」という西園寺家に伝わる鷹狩の言い伝えを記したものに登場するのだった。「こい丸(鯉丸)」という名を持ち、この鷹には鷹狩を訓練する際、最初に魚をとらせたという。
 鷹とともに狩りをする鷹犬も特別だった。「こい丸」には、カワウソと犬の間にうまれた動物をつけたという。この鷹犬は水の中にはいるのが得意で、大津の浦からとりよせる、と記されている。
 
  実際は、こんなハイブリット鷹や、ハイブリット犬は存在しないのだろうが、魚をとるミサゴで試みたり、泳ぎのうまい猟犬がいた可能性をうかがわせる。
  特に、この猟犬が大津の浦でそだっている、というのが興味深い。泳ぎの得意な犬種の順位は、wanwans というサイトで見られ、以下のようになっている。
 
 
     カナダのニューファンドランド島で漁師の手伝いをしていた
 2位 ポーチュギーズ・ウォータードッグ
     魚を網へ追いこんだり、海になくした漁具を回収した
 3位 チュサピーク・ベイ・レトリーバー
 4位 ラブラトール・レトリーバー
     寒い海で網、魚を運んだ
     鳥の猟で水上の獲物を回収した
 
 水泳がうまいのは、海外では、漁師の手伝いをした犬か、水上での鳥猟で活躍した犬であることがわかる。カワウソ犬も、大津の浦で、漁業の手伝いをしたか、鴨猟の手伝いをしたのかもしれない。
 琵琶湖で行われる鴨猟は、銃でなく、長い藤蔓をあんで、とりもちをぬり、鴨をひっかける独特の「もちなわ漁」だったという。
 泳ぐ犬は、あるいは、鴨を仕掛けにおいこんだり、回収の手伝いをしていたのか、と想像したくなる。
 史料や、ほかに伝承はのこっていないが、大津そだちの鷹犬が根も葉もない話とも思えない。