つくるが巡礼で出会うのはヤブサヨナキドリか

 鳥にくわしいわけではない。 
 1995年「ねじまき鳥クロニクル」①②をよんで、ねじまき鳥がうちの近所にもいることに気づいた。
  ギィー、ギィーという鳥の鳴声。
 これはねじをまく音ではないか、と。
 オナガだった。
 
 数羽で行動することが多く、耳ざわりな声だとおもっていた。
 オナガが、ねじまき鳥の本当の「正体」なのかは、たしかめようがないが、オナガが庭の樹木から、別の庭の樹木に水平飛行をするのをみかけると、 「あっ、ねじまき鳥!」とおもうようになってしまった。
  村上春樹新作の「色彩を持たない多崎つくると 、彼の巡礼の年」には、終盤のフィンランドの別荘の場面で、「独特な不思議なメロディーを持つ啼き声」の鳥が登場する。
  主人公はエリという女性と、林のなかで何度もくりかえされるメロディーをきく。エリは、「親鳥が子供たちにああやって啼き方を教えているんだよ」「ここへ来るまで私は知らなかった。鳥たちがいちいち啼き方を教わらなくちゃならないなんて」 と主人公にいう。
 そんな鳥がいるのだろうか。
  欧州で、親鳥が巣の中で、ひなに美しいなき方をおしえる、とされる鳥はいる。
  ナイチンゲール。いいつたえ、なのだろうとおもう。
 フィンランドのこの鳥も、ナイチンゲールの仲間なのだろうか。
 フィンランドに生息するナイチンゲールの仲間はー。
 AVIBASEで探索すると、全13種のうち、
  Common Nightingale サヨナキドリ
  Thrush Nightingale  ヤブサヨナキドリ
  Siberian Rubythroat ノゴマ
の3種類。
 この中で、世界中で広く生息するサヨナキドリやノゴマは、フィンランドでは「稀」だとされる。しぼられてくるのが「ヤブサヨナキドリ」。「ヨナキツグミ」ともいうのだそうだ。
 
 thrush nightingale の thrushはつぐみ、のことだ。
 グレイと茶。みた目は地味ではある。
 
 YOUTUBEで、ヤブサヨナキドリの声をきいてみる。
 独特で、不思議ななき声、ではある。鳥同士でなき声をかわしてもいる。
  
 この作品でキーになるピアノ曲、「リスト 巡礼の年 ルマルデュペイ」も、YOUTUBEでききながら、小説をよみすすんだ。
 
  ヤブサヨナキドリが、ホントにその鳥の「正体」なのか、たしかめようがないけれど。