トビとタカ―気になる普羅の句

 
ワシタカの生態を、俳句で発見することがある。
 
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鷹と鳶闘ひ落ちぬ濃山吹
 
 奥飛騨を旅して、俳人の前田普羅が、目撃したのは、春先、鷹と鳶が争いながら、落下する姿だった。この句をおさめる「飛騨紬(ひだつむぎ)」は、戦後まもなくの1947年に靖文社から発行された。普羅の奥飛騨での写生句ばかりをあつめたものだから、想像の句ではない。
 
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 タカとトビはたたかうのだ。
 トビをかまって、たたかうワシタカというと、ノスリとかチュウヒあたりなのだろうか。こういうことに詳しい先達がほしい。
  
 山歩きが好きだった前田普羅(1884-1954)は、すんでいた富山から、山国に足をのばした。越前から飛騨まであるいた時の作品を「飛騨紬」にまとめた。
 原石鼎、飯田蛇笏、村上鬼城とともに、高浜虚子門の四天王といわれたが、「晩年不遇だったことを思うと、とくべつ痛ましい気がする」と、山本健吉普羅が亡くなった時、こうかいている。
 「かりがねのあまりに高く帰るなり」という句などをあげて、「晩年の句には寂寥の気を深めているようだ」(昭和俳句)とも。
  晩年の寂寥には、戦中時代の行跡と関連した別の訳があるようだが。
 
イメージ 3普羅の検印
 
「連山の流るゝままに流るゝ鷹」 中村草田男
 など、鷹をそれらしくえがくものはあるが、うまいなあ、でおわってしまう。