昨年、ボクシングの世界戦にでかけ、試合前の国歌演奏で 起立してメキシコ国旗をまじまじみたら、ヘビをくわえたワシがえがかれているのに気づいた。
湖の岩にはえたサボテンにワシがとまって、右脚でヘビの胴をつかみ、クチバシで頭の下をかんでいる。
メキシコ国章だ。
スペイン植民地支配前の、メキシコの先住民、アステカの神話にもとづいて図案化されたとされる。
神話伝説によると、メシーカは繁栄の地をさがしもとめ、太陽神が予言した約束の地をみつけて、首都建設をした。その地は、ヘビをくわえたワシが、湖の岩にはえたサボテンにとまっているというものだった。 それが、いまのメキシコシティ。
メキシコの建国の象徴にふさわしい話、と納得したが、しらべてみると、これが、一筋縄ではいかないようなのだ。二村久則さん、川田玲子さんの論文「鷲・サボテン・蛇」(名古屋大・言語文化論集、21巻2号、2000年)をみつけた。
スペイン植民地時代のメキシコで発行された書籍、新聞などをあたり、アステカの神話のワシ、サボテン、ヘビの図像をさぐっていた。1823年の国章誕生までおっているのだが、そもそものアステカの首都創設神話には、ヘビがでてこないようなのだ。
神話にもとづく図像には、ワシが美しい鳥をつかんでいる図もあって、ヘビが重要な意味をもっているわけではなかったらしい。
ワシとヘビの伝承は、基督教文化のヨーロッパにもあるので、紋章には、植民地支配したスペイン起源説まででている始末だった。
1 先住民文化説
2 スペイン文化説
3 1、2の混交説
今の国章の、ワシ、ヘビ、水、石のそろいぶみまで、ずいぶん変遷があり、もっともっとしらべないとわからない、というのが結論のようだ。 たしかに、基督教は、ヘビを悪としてとらえていたので、ワシにくらわれるヘビと、むすびつく。
アステカ文化で、ヘビはどうとらえられていたか。古代マヤ文明ではピラミッドのヘビの像がしめすように、たいへんあがめられていた。
アステカ文明で、ヘビとワシの関連がみいだせないとなると、ヘビをくうワシのイメージは、腑におちない。
もう、国章は定着しているので、メキシコ人ボクサーだって、いまさら、ごちゃごちゃいわないでくれ、というだろう。
しかし、ワシ、タカに興味をもってしらべるだけで、いろいろなことにでくわすのだ。
(続く)