どっちが怖い、科博のニホンオオカミと伏見稲荷のキツネと

「チョコレート展」を見に、上野の科学博物館に行ったついでに、同館のニホンオオカミ(剥製)を探した。
  ボランティアの男性に、「ニホンオオカミどこですか」と聞くと、「地球館の3階奥の右側です」とすかさず返事があったのは、ニホンオオカミは他の動物の剥製より、人気があるからだろうか。
  
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 剥製は、明治初めの福島産の雄のオオカミ。獰猛な感じはなくて、目と目が離れているためか、おっとりして、かわいいではないか。
 
 大きさは、中型犬くらい。近くに展示されている背黒ジャッカルは予想以上に小さくてキツネのようだったが、中型のディンゴ同様、獰猛な雰囲気を漂わせていた。
 
 オオカミ研究の第一人者の平岩米吉さんによると、日本では、江戸時代中期まで、オオカミはさほど恐れられていなかった。
 享保17年(1732)に、狂犬病が日本に運び込まれて感染が広がったとき、犬からオオカミにも伝染。凶暴化したオオカミが人里にも現れるようになったという。
 人間は身を守るために鉄砲でオオカミを撃ち、生息数も激減して、ついに絶滅してしまったのだった。
 それまで、まれに里に下りてきても、オオカミは人間と共生していたのだそうだ。
 ニホンオオカミ絶滅は、大航海時代に端を発した国際交流の悲劇のひとつでもあることになるのだろうか。
 
  先週の京都旅行で立ち寄った伏見稲荷のキツネの方が、ニホンオオカミよりよっぽど、怖い顔をしていた。
 
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 屍体を食べつくす「ダッキニ」は印度で信仰されたが、モデルはジャッカルだったらしい。野干と中国で訳され、日本ではキツネとなってしまった。マハーカーラ(大黒天)の手下で、死体の心臓を食べつくすダッキニは中世日本で大いに信仰されたが、いつの間にかキツネとして稲荷社におさまっている。
 
 アジアの野生犬ドールは、見た目もキツネだが、クークーとアカギツネしか出さない鳴き方をするそうだ。キツネにホントに似ている。
 ジャッカルや印度野生犬ドールがキツネになりすまして、日本にあまたある稲荷神社にいる、と考えるとちょっと怖い。