2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

法隆寺再建論争の恐ろしい誤記

テレビで米国の情勢をとうとうと語っていた経済研究所の所長が、秋の大統領選を前にトランプがミスを連発して自滅気味なことを、「漁夫の利でバイデンが有利になっている」と話していた。漁夫の利という言葉の意味を取り違えている、この程度の人の話を信用…

喜田貞吉の「悲惨なる僥倖」

なぜ、喜田貞吉が法隆寺の老人、北畠男爵に気に入られたのか。 ヒントになるのが、喜田が還暦の時に発行した「六十年の回顧」(昭和8年)の記述だ。 喜田は明治38年法隆寺に二度目の訪問をしたときに、奈良女子高等師範の水木要太郎に北畠邸に連れていか…

法隆寺国宝仏をカンカン叩いた男爵

息子夫婦が近所に越して来てから久しく、孫を連れて遊びによく来るが、先だっては、夫婦で訪ねた京都の寺の話になった。副住職に檀家の墓地に連れていかれ、周囲の墓をペタペタ叩いて、墓石の説明をされたという。ペタペタペタペタ。止むことがなく、そんな…

地震と要石と鎌足と

未明に地震があって、目をさました。 震源地が千葉東北部と知って、ああ、要石の鹿島神宮の傍か、地震の巣だからな、と思いまた眠った。 家族で鹿島神宮にお参りに行ったことがある。元旦が仕事だったので、年末に休暇を取って、鹿島神宮には大みそかに訪ね…

In a cat's eye, all things belong to cats

ダイソンの扇風機の長い段ボールの中が、最近の猫の遊び場だ。 細が、途中に丸い穴を2つあけた。その穴に手を入れると、猫が中から前足を出してじゃれたり、噛みついてくる。猫にとって、いい運動のようだ。梅雨時、猫に付き合うこちらも汗だくになる。 コ…

富士山と琵琶湖の容積対決

梅雨入りして1週間たった。最近の五月雨は、だらだら降るというより、集中豪雨のような強い降りがあって、油断ならなくなった。 湖へ富士をもどすやさつき雨 与謝蕪村にこんな句があって、蕪村は、富士山を崩すような激しい五月雨を描いている。 湖は琵琶湖…

富士山頂で野球を企画した人物

大正8年、喜田貞吉が新雑誌「民族と歴史」の発行に乗り出し、今まで熱心に編集に携った「歴史地理」から距離をとった時から、「歴史地理」の表紙も変化した。 MTのサインの表紙から、まったく作風の違ったものに変わった。翌9年7月号の特集「富士山号」が…

パデレフスキの決意

森田恒友、山本鼎がパリで、山田潤二がベルリンで、ドイツの宣戦布告を聞いた1914年8月1日、フランス国境に近いスイスのモルジュに、これまで幾度か触れてきた53歳のポーランドのピアニスト・パデレフスキが滞在していた。(写真はモルジェの邸宅と…

宣戦布告日の伯林と巴里

大正3年6月10日、画家森田恒友がパリに到着して、50日ほど経ったとき、ドイツが宣戦布告。フランスは第一次世界大戦に突入する。パリで仲間の画家たちと連日美術館、展覧会を巡り、先輩画家の山本鼎と郊外の短期旅行に出て、最初の1か月を過ごした森…

恒友の巴里通信

古本店で見つけた歌誌「多摩」をきっかけに、美術家としての北原白秋に興味を持ったが、調べてみると、版画美術に情熱を燃やす「方寸」の若き集団と、明治末から大正時代にかけて、強いつながりがあったことが分かった。 スバル系の詩人と美術家が交流した明…

幻に終わったセーヌ河岸の共同生活

猫が騒いで、本棚の天辺から物を落とす。紙箱が落ちて、マッチが散乱した。懐かしいものが沢山出てきた。 金色と茶のマッチは、ただ一度だけ訪問したパリ宿泊先ホテルの思い出深いものだ。ホテル創立100年にあたる1978年だったのだな。42年も経って…

パリから白秋への激励はがき

画家の森田恒友がパリに到着した大正3年、第一次世界大戦が勃発した。戦時下のパリでは、親友の画家山本鼎が待ち構えていた。版画同人誌「方寸」の仲間たちは、石井柏亭を皮切りに、次々に留学したが、森田はとんでもない時期の渡欧となった。 この時山本は…

床屋談義とネアンデルタール人の髪型

事務所を抜け出して、近所の床屋へ行く。田村隆一の夏の詩に、床屋の出てくるのがあって、伸びた髪と一緒に不眠症も刈り取る、といった一節があったような気がする。寝不足退治もかねてドアを開けた。 担当してくれるのが、3人のうち気まじめな男性店員だっ…

其角の命拾いと大野秀和

薄田泣菫のエッセイはやはり面白い。大正時代の人物や時代の空気が伝わってくるからということもあるが、関心を持っている人物が近いということもある。 好きな元禄の俳人、宝井其角も泣菫の「茶話」に登場する。「36計逃げるに如かず」のエピソードを持つ…